◆届かない手紙◆

親愛なる姫様。

お元気でいらっしゃいますか。
私がこの街に来て、既に3年が経とうとしております。
今まで、連絡を差し上げず、申し訳ございませんでした。

私は新しい仕事に就いております。
今まで、神官として生きてきた私には、全てが新鮮な出来事です。
まだまだ未熟者ではありますが、楽しく過ごしております。

この街にも、姫様がご結婚されたということが伝わっております。
残念ながらお相手に関しては話がなく、どのような人物なのかわかりかねます。
しかしながら、姫様がお選びになった方ですから、心配ないと思っております。

私はあのとき、サントハイムを捨てると申し上げました。
しかし、私の故郷はやはりサントハイムしかありません。
サントハイムが素晴らしい国になることを、お祈り申し上げます。

いつか、再びお会いできることがあれば、



「はあ……」
私は書きかけの手紙を引き出しにしまう。
この引き出しの中には、今まで出せなかった手紙が山のように入っている。
「姫様……お幸せに……」
首にかけたままのロザリオを握り締め、私は姫様の幸せを祈る。

そろそろ、仕事の始まる時間。
私は引き出しに鍵をかけて、部屋を後にした。


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